何某の娯楽生活

何某です。本を読んだり、アニメ見たりした感想を週一でつぶやきます。よろしく願いします

ネタバレ上等!忙しい人向けの「どうしても生きてる」(朝井リョウ)の解説をしてみた!

こんにちは。何某です。

ついに全国に緊急事態宣言が出ましたね。どこ行っても警戒区域と言うことは、言い換えればどこも同じ場所ということではないでしょうか?ウイルスに感染しないようにすることよりも、感染をはねのけられるくらいの体力をつけておいた方が、若者には効果的かもしれませんね。守りではなく攻めの姿勢で行きましょう。

 

さて、そんな自粛期間中にお勧めする本がこちら

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朝井リョウ「どうしても生きてる」

 

こちら、朝井リョウの作品「どうしても生きてる」です。

個人的に私のような真面目系陰キャにお勧めしたい作品でもあります。肉体を大量の針で刺されるような感覚が読後感にありますよ。

 

ではでは、解説していきましょう!

 

 

「どうしても生きてる」ってどんな本?

ショートストーリーが6編あります。すべて30分~1時間で読破できるでしょう。速読に自信がある人はもっと早いかも。

 

全体を通して、「無力な人間」「振り回される人間」の苦悩、感情について書かれています。ハッピーエンドではないのでご注意を。

 

各話のあらすじ、ざっくりと!

1「健やかな倫理」…30代の女性が主人公。結婚や出産といった「その世代が話す話題」に抵抗感があっても、それを相手に伝えられない。そんな彼女が毎日確認する「倫理」とは?

 

2「流転」…30代男性が主人公。かつては友人とコンビで漫画を描いていたが、自分の才能の無さを相方に押し付け、そのまま正社員になった。どれだけ自分を信じようとしても、最終的には社会の荒波に飲まれる生活に、最後の光が見えてきたが、男は何を考え、行動するのか?

 

3「7分24秒めへ」…今月で契約の切られるパート社員の女性が主人公。「男性だからYouTubeといったリスキーなことに挑戦でき、成果を伸ばすことができる」と言った正社員の言葉、人知れずやめるパートタイマーの女性たちと、別れを惜しまれる育児休暇の正社員。毎日を差別と過ごしながら、彼女はラーメンを食べる

 

4「風が吹いたとて」…パートで働く専業主婦が主人公。この世は少しずつルールを破って成立している。私はそれを問いただす余裕もない。そんな時、どこかで「この世」が崩れていく瞬間が来る。

 

5「そんなの痛いに決まっている」…営業職男性が主人公。彼の尊敬する、何事にも「大丈夫」と言って支えてくれる上司の不祥事が流れてしまった。人間は常に完璧でなくてはいけないのか?完璧でないのだとしたら、どこに行けばその「完ぺきではない部分」を受け入れてくれるのだろうか

 

6「籤」(くじ)…劇場に勤務する女性の話。自分は常に、容姿で、性別で、環境で、外れくじを引いてきたと考えている。外れの道を常に歩んできた彼女が、それでも、どうしたって生きていくために、何を考えているのか?(この話が出はちょっと明るい未来を感じます。最後の章だからでしょうか?

こんな感じですかね?あらすじと言うよりも、紹介みたいになってしまいました。「流浪の月」のように一貫したストーリーが無いので、あらすじらしいものを書けません。

しかし、一つ一つの文章が短く、起承転結がある程度はわかるものなので(結、の部分には疑問が残りますが)、寝る前に少しづつ読み進めるのはアリだと思います。

 

(「流浪の月」はこちらから読んでね) 

toufnyanko.hateblo.jp

 

私は4つ目の「風が吹いたとて」が一番おすすめです。主婦でもないのに心に来るんですよね。皆さんも目をつぶってしまったルール違反や、面倒だなあということのできなかった会議の意見、先輩への注意、ありませんか?

 

「どうしても生きてる」感想を求められたときは?

(あまり感想を共有する場面が思いつきませんが)

「心の闇を見透かされたように感じた」

「誰も共感できないはずなのにどの話も感情移入してしまう」

「最後のがハッピーっぽく終わったのだけが救い」

といったところはどうでしょうか?

もしyoutubeに詳しい人ならば、

「絶対東海〇ンエアをモデルにしたと思われる話があるから、読んでほしい」と言って紹介するのもアリですね。勿論3章の事です。

 

以上、「どうしても生きてる」の解説でした!興味を持った方は下のリンクから飛んでくださいな!

 

どうしても生きてる

どうしても生きてる

 

 

 

また、「この本を解説してほしい」「もっとここを教えてほしい」といった要望があった人は、ぜひ、コメント欄に記入お願いします!フィクション、エッセイ、ビジネス書など、ジャンルは問いません!

 

ここからは私個人の感想になりますので、忙しい人はここまででOKです!ありがとうございました~!!!

 

 

 

 

何某の「どうしても生きてる」感想は?

この「どうしても生きてる」は、そのタイトル通り、登場人物が死ぬことはありません。ただそこに、「生きていく上で躓いてしまう小石のような価値観」から「通り抜けることも困難な」固い壁まで、様々な障害が、人の悪意無く作られているのです。

悪意さえあれば、倒すことができます。悪いことをやっていると叱り、請求し、自分の進みたい道を進むことができるのです。

しかし、現実はそうはいかない。誰かの障害は、誰かの善意であったり、時間的・金銭的な制約によって生まれた「どうしようのないもの」なのです。

「どうしようのないもの」は責任がありません。だって、誰も、悪いことをしていないのですから。そして、私たちはそれを知っています。繋がりにくい公共の電波、分からなかった認知症、移動手段として必要だった車、成果を上げるための自宅訪問やコールセンター、夜に突然泣き出す赤ちゃん。原因なんてない。あっても問い詰めたりなんてできない。それにエネルギーを割くほど、今の人間に余裕なんてない。

そうやって、自分の大切なものを失っていることに気が付いた時には、きっともう遅いんです。それを守りたくても、自分が本当は何がしたかったのかなんて誰にも、自分にもわからないまま、過去を思い返しては懐かしむのでしょう。

「どうしても生きてる」は、そんな、「適度に社会の波にさらされた、アイデンティティの薄い人間」の物語です。自分と年齢や立場が違っていても感情移入できるのは、根っこの部分が同じだからなのかな、と思います。

べつにこの本を読んだからと言って「よし、希望に向かって生きていこう!」とはなりません。むしろ、自分の心の弱さや醜さをさらされて、とてもじゃないんですけど人と話せる状態になれません。

それでも、明日と言わず、次の一時間、二時間、三時間を生き続ける人がいる、どうにもならない会社で、家庭で、ルールの中で、どうしても生きている人が私たちの他にもいるんだということが、少しの安心感につながり、もう少し「どうしても生きて」みようとなるんだと思います。